室戸を行く2つのバス Vol.2

記事をご覧の皆様こんにちは、中の人38号ことみのしまです。Vol.1に引き続いて夏季休暇期間の室戸バス旅行についてお届けいたします。前回はこちらから。

12時過ぎごろ、海の駅とろむに到着。ここに「室玄」というレストランがありますので、この先の道のりで力尽きない為にも(?)昼食を。

注文したのはとりから定食(1,000円)。折角室戸に来たのなら海鮮料理も良いかと思いましたが、どうしても値段が高かったので… という話はさて置いて、いただきます。

ここで簡単に、室戸の交通について簡単に説明いたしましょう。
現在、奈半利から室戸岬を経て甲浦にかけてはバスが地域住民の足となっていますが、実は鉄道の敷設計画が存在していました。その名は国鉄阿佐線、高知県後免から安芸、室戸岬を経て徳島県牟岐までを結ぶ約125kmの路線計画です。1965年に牟岐~阿波海南と後免~田野が、続いて1971年に阿波海南~野根が着工。その地域に住む人々は室戸に鉄道が来るとたいそう楽しみにしていたそうです。しかし、その頃の国鉄は火の車。牟岐~海部間はなんとか開業に漕ぎ着き、海部~宍喰間もレール敷設まで完了しましたが、それ以降の工事は国鉄再建法施行によって凍結。街中にそびえ立つ橋脚だけが虚しく残されていたと聞きます。
その後、阿佐線両端で未成区間の経営を引き継ぐ第三セクター会社が設立され、工事が再開、牟岐~海部は牟岐線の一部になり海部~甲浦は阿佐海岸鉄道阿佐東線、後免~奈半利は土佐くろしお鉄道阿佐線として開業。結果、現在の高知東部・徳島南部の交通網に落ち着くに至りました。1

さて長々と話しているうちに食事も終わりましたので、次のバスを待ちましょう。

次に乗車しますのは、阿佐海岸鉄道が運行するDMV。土休日に1往復のみ存在する海の駅とろむ~阿波海南文化村の便に乗車します。

13時30分、下り海の駅とろむ行が到着、数人の乗客を降ろします。一旦駐車場へ移動し上り発車時刻を待つようですので、いくらか撮影を。トヨタのマイクロバス「コースター」をベースとしたDMV93形です。

十数分ほど待つと停留所まで戻ってきましたので乗車。今回私はWeb上で乗車券を事前購入していましたので、名前を運転士さんに告げて乗車します。車内は1列2+1席(1列目は2人席、6列目は4人席)の定員18人。半分に満たない5名を乗せて13時52分に海の駅とろむを後にします。

国道55号を5分ほど進み、前方に巨岩を見ながら左へ曲がると室戸岬停留所。ここで5名乗車の乗車があり、車内は途端に賑わいます。

岬を境にしてここから先は進路を北に取ります。風景も変化し、山がより一層迫り、海も土佐湾側以上に岩がちになっていて非常に見応えがあります。

室戸世界ジオパークセンター、むろと廃校水族館両停留所では特に乗客の動きはなくそのまま発車。室戸八景にも選ばれている「鹿岡の夫婦岩」などを見つつ佐喜浜へ。上り坂に転じ、一旦海岸線を離れて町の中心部を通過。この町を作った川を渡るとすぐに山が見え、再び道路は海側へと押し出されていきます。

佐喜浜の市街地を通過後、少しうたた寝をしながら揺られること25分、いつの間にやら海の駅東洋町停留所に到着。ここで2名が下車します。停留所のすぐ隣は海水浴場になっているようです。ここまで岩だらけだった海に突然美しい砂浜が現れたことに少し違和感を覚えましたが、すぐ隣に陸繋島があるのを見ると少し納得しました。

2分間の停車が終わると、少しだけ来た道を戻り、狭い道へ入っていきます。次の停留所は「甲浦駅」。そう、「駅」です。このバスが阿佐海岸鉄道によって運営されている事からお気づきの方も多いと思いますが、このバスは何と鉄道車両に化けます。ボンネットと後方下部に鉄輪が格納されており、それを次の駅から出して線路の上を走るのです。DMVという名は”Dual Mode Vehicle”の頭文字を取ったものですが、Dual Modeとはバスモードと鉄道モードを指していたのですね。

興奮気味な私を乗せてバスはどんどんと甲浦駅に近づいていきます。交差点を曲がると遂に立派な高架線路とアプローチ用のスロープがその姿を現します。停留所を発車するとこれをゆっくりと上り、タイヤを何かに擦らせながら停車。前方には確かに2本のレールが見えます。

「甲浦モードインターチェンジに到着しました。只今から、鉄道モードにモードチェンジを行います。」「モードチェンジ、スタート。」自動放送がそう告げると、阿波踊りの音が流れ始めながら床下から何かが動く音が。と思うと車体はみるみるうちに後傾姿勢に。傾き切ったかと思うと今度は後方から突き上げるような振動がします。阿波踊りの音が止まると、自動放送が「フィニッシュ。」と一言。少しシュールで思わず笑ってしまいます。

運転士さんが一旦車外に出て安全確認を行って乗り込むと、チーンという車内信号の音とともに発車。信号場を出てすぐトンネルに入ります。前照灯で照らされるトンネル内を鉄道らしいガッタンゴットンの音を響かせながら、50km/h前後と鉄道にしては遅めの速度で進んでいきます。外が明るくなると左手に先代の鉄道車両ASA-300「たかちほ」の姿が見えます。留置されている場所はDMVがやってくる前までは阿佐海岸鉄道の車庫だったようです。

まもなく宍喰駅に到着。乗客用扉が左側にしかないためホームは上り・下り方面で別々になっています。当駅ではある程度の停車時間があるため、鉄道モードとしてのDMVや駅構内を撮影。

一通り撮影を終え、車内に戻ります。「車内信号進行よし」の喚呼と共に発車。トンネルを以て海にせり出した山を貫通していきます。5分ほどの乗車で運転席からまたチーンと音が鳴り、続いて「車内信号注意」の喚呼。海部駅が近いのでしょう。息継ぎするかのように地上に出、またトンネルに入ると線路は緩やかに左カーブ。これを抜けるとすぐに駅が現れました。

元々2面2線でJR四国牟岐線との境界駅だった海部駅の旧副本線には、ASA-101「しおかぜ」が留置されています。(ASA-300も同様でしたが)寸断された線路の上に乗り二度と本線に進入できないこの気動車は、見ていて何とも物寂しく感じられます。

「車内信号注意。」おっと、出発早々注意の喚呼。次の停留所は阿波海南、モードインターチェンジが併設されています。鉄道区間の終端に差し掛かっているために注意信号となっているのでしょうか、ゆっくりと進みます。

川を越え、小さなトンネルを抜けたあたりで車両は一旦停止。もう一度「車内信号注意」を喚呼し、25km/hの制限標識に従ってモードインターチェンジへ進入、「赤丸」という喚呼をし、車両は停車します。鉄道モードへの切り替え時同様に放送が流れ、上方向に向いていた前面展望は徐々に水平に戻っていきます。これで終わりかと思いきや数秒後に後方からガタンと強い衝撃。恐らく後輪格納のショックでしょう。運転士さんによる確認後、阿波海南停留所でドアを開き、2名が下車。

さて、鉄道区間が終われば残す停留所は1つ、終点の阿波海南文化村。阿波海南からはさほど離れておらず、およそ3分の乗車で到着。私含め乗車していた全員を降ろし、折り返し道の駅宍喰温泉行として出発していきました。

この先JR牟岐線に乗って徳島へ向かうためにJR阿波海南駅まで徒歩で向かい、ついでにモードインターチェンジの見学を。青色のDMVを見送った後、16:08分発普通徳島行で阿波海南駅を後にしました。

…いかがでしたでしょうか。非常に拙い文章で見苦しかったかと思いますが、国鉄阿佐線の夢を受け継いだ2つのバスと鉄路、それらの沿線風景、見どころが読者の方々に伝わっていれば幸いです。特に阿佐海岸鉄道のDMVは世界でも実用化されているのはここのみですので、是非とも訪れてみてください。では、次回の記事でお会いしましょう!

参考文献:

  1. https://frdb.railway-pressnet.com/maboroshi/cjr0230 ↩︎

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